昔の恋人の声を聴いたらドキドキするのが自然です
photo © 2009 Paul A. Hernandez , Flickr
音や音楽はなぜ、私たちの感情をこうも左右するのでしょう。
明るい音楽を聴けば、前向きな気持ちが湧いてくるし、悲しい音楽を聴けばちょっとセンチメンタルな気分になったりします。
多くのBGMに関する実験からも分かっているとおり、音楽の種類や音量の違いによって人の行動は明確に変化します。
曲のテンポによって滞在時間が変化したり、音量によって飲酒する量が増えたり、ホテルでは音楽の違いによって出費する金額が増えたりするのです。
場合によっては、ドイツの音楽を流すと、フランス産のワインよりもドイツ産のワインの方が売れたなんていう結果も出ています。
音や音楽は人の心理や感情に働きかけるというユニークな特徴を持っています。
実際、上記の通り行動が変化することが分かっているわけですが、行動が変化するということはすなわち感情の変化も同時に起こっています。
その人が意識していようが、いまいが起こってしまっているのです。
「あれ、なんか今日調子よくない?ノリノリじゃない?いっちゃう」
みたいに、意味不明なノリでお酒の量が増えていったとしても、それはもしかしたらその時に居合わせたジェームス・ブラウンのしわざかもしれないわけです(古いか)。
つまり、「音の専門家」にかかればある程度の行動を導くことはできるわけですが、(もちろん「音の専門家」は導くというよりは、その場にふさわしい音楽を提供するという方向に向かうのが正しい)逆に考えれば、自分の身の回りの音や音楽を選ぶことができれば、無駄なマイナスの感情を起こす必要はなくなるかもしれません。
昔は音楽の効果というと、ちょっとスピリチュアルな方面で語られることが多かったのですが(それも嫌いじゃない)、近年はあくまで空気の物理的な振動によるわけだから、人に影響があって当たり前というような雰囲気があるわけです。
あるコラムでこんなことを書きました。
部屋を掃除していたら、昔の恋人の写真が出てきた。
いっぽう、写真ではなくて昔の恋人の声が入ったテープが出てきた。
写真を見ると、なんというか「こんな時期あったよね」というようなふわ~っとした感情。なんか、「浸る」という言葉がぴったりのような。
では、肉声のほうはどうか。
あまりにリアルで浸るというよりは、一瞬にして引き込まれる感じですよね。
普通に男性目線で語っている自分が恥ずかしいのですが、妙にドキドキするはずです。はい。
ま、どこに昔の恋人の声が入ったテープがあるんだよという話ですよね?
しかも、テープかよ、という話ですよね?
それは、マクセルなのかTDKなのかはっきりしろよ、という話ですよね?
おまえは、盗撮よりも盗聴というマニアックな奴なのか?
という……、話ではありません。はい。
そういうことではなくて、うちらはどうやっても音が持つ感情を変化させるパワーからは逃れられないので、
それをプラスの方向に働かせていこうという話です。
日頃、何気なく接している音の中には、マクセル並に強烈なエネルギーを発しているものがあるかもしれませんよ。
質の高い音環境を整えるということが、生活の質を高めることに繋がるでしょう。
この記事を書いている人
- Twitter:@fermondo
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新潟大学教育学部芸術学科でピアノ演奏と音楽心理学を専攻。音や音楽が人の感情におよぼす影響について研究する。飲食店やオフィスなど商用BGMに関するコンサルティング、ビジネス書、専門誌への寄稿、医療学会での講演、ラジオ、テレビ、雑誌などメディア露出も多数。BGMアドバイザーとして音楽を提供する企業への協力や、個人向けに音楽心理カウンセリング(音で心を整える)をおこなうなどその活動は多岐に渡る。
著書に「心を動かす音の心理学」がある
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