何気なく聴き始めたその音楽はあなたの感情を知っている
By: David Goehring
いつも聴いている音楽について考えてみる
音楽ってアイデンティティの象徴なんていわれます。確かに、そういう一面もあります。クラシックを聴いていれば、ちょっとインテリに見られたいという思いが見え隠れしていたり、ロックを聴いていればちょっとアウトローな自分をどこかで感じていたり、そんな「自分」を写すものとして捉えることもしばしばあります。
ただ不思議なのは、好きなあの音楽もいつでもウェルカムではないということです。
ノリノリで気分が高揚するようなオアシスのあのナンバーだって、聴きたくないときもあります。
逆に、普段はあまり聴かないモーツァルトの明朗なパッセージについ耳を傾けたくなるときだってあるはずです。
普段はこういったことにあまり意識を向ける人は少ないでしょう。音楽って「好きだから聴く」という暗黙の了解の元聴いているので、個人的にそんな理由など考える必要がないからです。
何気なく飛ばしたその曲。なんでだろう。
車でCDを聴いているときよくあるのが、何気なく飛ばす曲があるということ。次の曲へ飛ばすボタンを押しながらしっくりくる曲を探すということ、よくあるのではないでしょうか。
音楽は感情へ訴える力が強いことは経験的にもよく理解できます。
音楽を聴いて、楽しい気分になったり、悲しい気分になったり。また、その時の感情が増幅されたり。
そして、人間がそのときに「聴きたい音楽」というのは無意識に自分と同調している音楽なのです。
昨日はノリノリで聴いていたブライアン・アダムスも、今日はちょっと聴きたくないな……。と、思ったとすればそれはちょっと気持ちが弱っている証拠。
ゆっくりとしたクラシックが何となく聴きたいなを思ったのであれば、気持ちを整理する時間が必要という合図。
そんな風に音楽は、ひそかにあなたの感情を教えてくれているのです。
「いや、そんな自分の感情なんて自分がよく分かっている」
そう、思うかもしれません。
確かに、自分のことは自分がよく分かっているでしょう。
でも、なんかよくわからないけど、イライラしていたり、なんだか不安な感じがしていたり。
よく分かっているはずの自分が、ちょっと見えなくなってしまうこともありますよね。
日々聴いている音楽、そしてその音楽を何気なくセレクトした感情に、少しだけ意識を傾けてみると俯瞰して自分の感情に向き合えるかもしれません。
そんな役割も音楽は担っているようです。
この記事を書いている人
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新潟大学教育学部芸術学科でピアノ演奏と音楽心理学を専攻。音や音楽が人の感情におよぼす影響について研究する。飲食店やオフィスなど商用BGMに関するコンサルティング、ビジネス書、専門誌への寄稿、医療学会での講演、ラジオ、テレビ、雑誌などメディア露出も多数。BGMアドバイザーとして音楽を提供する企業への協力や、個人向けに音楽心理カウンセリング(音で心を整える)をおこなうなどその活動は多岐に渡る。
著書に「心を動かす音の心理学」がある
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